一級建築士事務所 栗原健一建築事務所


第2回   土地を探す(もしくは所有地の特性を調べる)




※建築基準法上の道路
(姫路市のサイトにわかりやすい表がありました








▲接道していない敷地例
 (黒い部分は敷地の一部ではなく、通行できるが基準法上の道路でもない)


































 住宅用に限らず、一般的な市街地において建築物を建てようとする土地は、必ず「道路」に接していなければならないことが建築基準法に定められています。これを接道要件などと言います。そして、この「道路」とは建築基準法で定義された数種類に限られ、実際に人や車が通行できているという見た目だけでは判断できません。一般の方がこの数種類の種別について理解し覚えることは難しいかもしれませんので、その土地の管轄行政(市役所や区役所)の建築課等に行って建築基準法上の接道の可否を訪ねた方がよいでしょう。
 住宅用の場合、この「道路」への接道長さは2m以上必要ですが、地域によっては条例などで、より厳しい長さの規定を設けている場合もあります。
 また、「建築基準法上の道路扱い」と道路部分の「所有権」とは直接は関係ありません。所有権が民間の道路を「私道」と言いますが、「私道」でもこの「道路」として扱われているケースもあります。「位置指定道路」や「42条2項道路」などに多くあります。

 これから住宅用の土地を探そうとしている方にとって後述のように数々の注意すべき点がありますが、もっとも注意を払わなければならないのがこの「接道要件」です。また、既に住宅と土地を所有している方にとっても土地の価値を左右する問題で、無関係ではありません。
 現在所有している土地に家が建っているからと言って接道要件が満たされているとは限りません。もし、接道要件を満たしていなければ、合法的に建て替えが出来ないケースがあります。売却しようとしても評価額は相当に低くなるでしょう。新規購入の場合は必須ですが、現在土地所有の方も対象の土地の接道要件の確認はしておきましょう。

 建築士事務所の業務にたずさわって40年の私ですが、この接道要件が満たされていないことに苦しんだ建て主の方を数多く見てきました。そして、確認申請業務を依頼される私たち建築士も同様に苦労するのです。
 新築、増築などの場合に、通常は建築確認申請書を行政や審査機関に提出し審査を受けます。しかし、この接道要件を満たしていなければ、審査は通らず確認済証は公布されません。

 新規土地購入の際の絶対条件である接道要件の確認方法ですが、担当部署の窓口で土地の所在地を示して「この土地に家が建てられますか?」と聞いていただくのが良いでしょう。たいていは、地図に道路種別ごとに色ヌリした「道路台帳」を見せてもらえますので、自分の目で確認しておくことをお勧めします。
 すでに所有している土地が接道要件を満たしていない場合、既存の建物を解体して更地にしてしまったら合法的な建築は無理となってしまいますが、柱や梁等の構造体の過半をそのままにしての改修の道は残されています。

▲好条件の住宅用敷地例
 (4mと6mの公道に面する角地)


▲ループ状道路の開発例





 住宅用の土地として、敷地とそれほどの高低差が無い幅員6m程度の区道や市道等の公的な道路に2m以上接していればまず問題はないので、極力この基準に合う道路環境の土地を探してください。また、その道路が行き止まりであるかどうか、抜け道となっているかなどは住環境にも影響します。行き止まりでなくループ状に両端が主要道路に連絡しているなら、抜け道利用者が少なく、避難上も危険は少ないので、一番望ましいといえるでしょう。

 次に、接道要件を満たしていたとして、一般の人が見落としがちなその他の注意点として以下に挙げておきます。
1) 用途地域、防火地域などの指定(建蔽率や容積率含む)により、建てられる用途や規模が制約される。制限の厳しい地域では希望する住宅としての広さを確保できない場合があるが、反面、住宅環境としては良好といえる場合もある。
2) 都市計画道路等の計画地域内にあると、構造や階数の制約がある。
3) 接道要件を満たした道路の幅が現状4m未満だと、道路中心線より2mの範囲は建物や塀などが建てられない場合がある。(42条2項道路)また、この中心線が現状の中心線でないこともある。(すでに反対側敷地が後退済等)
4) 角地は建蔽率のボーナス(通常10%アップ)があるが、隅切りをしなくてはならないことがある。
5) 隣地や道路との高低差が大きいと、高さの制約が出ることがある。
6) 敷地に接道する道路(法的かどうかにかかわらず)の幅が狭かったり階段状道路だと、工事車両が敷地まで入ってこれないことがある。敷地前が広くても途中で狭いと支障をきたすことがある。
7) 道路に家庭用電気のための電線設備がない場合やガス管本管や上下水道本管が埋設されていないと、その土地に引き込むまでの道路部分の埋設費用等を負担することがあり、その距離がかさむと思わぬ出費となる。道路との高低差も影響を受ける。
8) 昔に沼や河川だった場合は液状化の危険がある。直下に活断層があれば、どんなに耐震性を考慮しても倒壊は防げないこともある。これらは、簡単ではないと思われるが、その土地の成り立ちを調べることにこしたことはない。なお、行政では、その土地の付近のボーリングデータを閲覧させてくれることが多いので参考にできる。また、洪水等の際の被害想定を表したハザードマップを作成している行政がある。

 以上の注意点は、建築の知識の少ない一般の方が正しく調べることは無理と思われるますので、設計を依頼するかどうかは別として、調査だけを切り離して建築士に頼むことをお勧めします。


第3回へ続く
 


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